研究概要 |
Ca^<2+>欠乏に敏感なキウリを用いて. Ca^<2+>欠乏によるH^+ポンプの障害を中心に検討した. K^+の吸収にともなうH^+放出能を外液のpHの低下で測定すると5日間Ca^<2+>欠乏においた根で約50%低下していた. そこで根のミクロゾーム画分よりDextranT70を用いて膜ベシクルを調製して直接ベシクルのH^+ー輸送活性をキナクリンのクエンチング法で測定を試みた. 先ず調製したベシクルのH^+輸送の諸性質について調べた. 基質の利用性はATP》UTP>GTP=PPi>CTP=ADPの順であった. 阻害剤の影響はNaN_3,Na_2MoO_4で殆んど阻害されなかったが, 100μMNa_3VO_4で62%, 50mMKNO_3で42.8%の阻害が起こり, やや原形質膜を主体とするベシクルと考えられた. このベシクルのH^+ー輸送活性は根のH^+放出活性と同様, Ca_+欠乏で強く抑制されていた. 健全根, Ca^<2+>欠乏根のベシクルのATPに対するKm値はそれぞれ0.77mM, 1.43mMであった. 次にベシクルのH^+ーATPaseについて検討した. 活性は100μMNa_3VO_4で62.5%阻害されたが, KNO_3, DESによる阻害は小さく50μMDCCDによって32.7%阻害された. ベシクルのATPaseを比較するとCa^<2+>欠乏根ではbasal活性が増加したがH^+ーATPaseは逆に強くCa^<2+>欠乏で抑制されていた. またH^+ーATPaseのATPの対するKm値は, Ca^+欠乏根で約3倍高かった. これらの結果から, H^+ー輸送活性の低下の一因はH^+ーATPase活性の低下によると考えられた. ベシクルのH^+ーATPaseの活性低下は, 膜の脂質とタンバクの機能低下が考えられるので, 原形質膜よりnーOCtylーglucosideを用いH^+ーATPaseを可溶化し, リン脂質を加え膜再構成系でのH^+ーATPaseの活性を測定した. すると, 明らかにCa^<2+>欠乏根のリン脂質による活性化が低く, 既に報告したリン脂質の減少のみならず, H^+ーATPaseそのものの再構成系を含む機能低下が起っていると考えられた.
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