研究概要 |
イモなどの作物の貯蔵器官では,光合成器官に比べミトコドリアのF_1F_0ATPaseを介した酸化的リン酸化が細胞内ATP供給の上で占める役割が高いと考えられる. 研究の遅れている植物F_1F_0のバイオジェネシスに関して,本年度は以下の成果を得た. 1.サツマイモ塊根のF.ナ_<1.ニ>の核支配サブユニットのうち,既に解析を終えたβを除く4種(γ,δ,δ′,ε)の全てについて精製とN末端アミノ酸配列の決定を行った. その配列の相同性から,γはウシ,細菌のγ,δは細菌のδやウシのOSCPに対応することが強く示唆された. δとδ′のN末端配列は全く異なり, またδはトウモロコシのF.ナ_<1.ニ>δに対する抗体と反応するが, δ′は全く反応しなかった. これらのことから, δとδ′は構造的に異なるタンパク貭であり, δ′が単子葉植物の単離万に含まれないサブユニットであることが分り, その構造と機能や進化的意義に興味が持たれる. 2.δのN末端アミノ酸配列よりDNAプローブを合成し,新規に開発したcDNAクローニング用ベクターを用いて作成した塊根cDNAライブラリーをスクリーニングした. その結果,数個の強い陽性のシグナルを与えるコロニーを同定し,現在そのcDNAを解析中である. δ′についても同様にcDNAクローニングの為のプローブを合成した. 3.アラスカエンドウのミトコンドリアDNAに支配されたF_1α遺伝子の5′上流に,α遺伝子とは逆向きにF.ナ_<0.ニ>サブユニット9遺伝子が存在することを見出して全構造を決定した. また,この領域の転写地図を作成し,両遺伝子共に5′や3′末端部位の異なる複数のmRNAがミトコンドリア中に存在することを明らかにして,これらミトコンドリア遺伝子のプロモーターを同定するために,mRNAの5′末端部位の決定を行った.
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