研究概要 |
本研究は種々の公益的機能の発揮に有効な林型であるとされる複層林を,従来から行なわれている集約な施業ではなく,耐陰性と生長速度の異なる樹種を階層混交させ,できるだけ粗放技術によって造成しようとするものである. 従って技術体系をもたないまヽ先立している混交型複層林の実態調査と資料収集が研究の主体となる. 本年度は研究計画に従い,中部,中国地方の林分の調査,解析と,次年度へ向けての基礎資料の収集を行なった. 現地調査によってえられた研究成果の主なものは次のようである. 1.ヒノキやスギの造林地にマツ類や広葉樹が進入し混交する事例は多いが,今回調査した広島県西条営林署姥ヶ原国有林の事例のように,クロマツ造林地に天然生のヒノキやアカマツ,広葉樹が混交した林分は極めてめずらしい. 現在40年生のクロマツ植栽木を除伐した箇所では,前生のヒノキ人工林内に更新していたヒノキ稚樹がよく生長し,樹高10m前後になっている. またクロマツの優勢な箇所では天然生ヒノキや広葉樹が中増を占め,典型的な階層構造をもつ混交複層林となっているが,今後ヒノキが優勢木として育つ可能性は高い. このような立地ではむしろ粗放技術によって価値の高い林分を造成することは容易であると判断された. 2.ヒノキ等比較的耐陰性の高い樹種は,傘伐(漸伐)天然下種更新によって混交型複層林を造成するのが最も有効,適切であると考えられるが,その施業例はほとんどない. 今回調査した愛知県新城営林署段戸国有林のヒノキ人工林における後伐後,無手入れのまヽ4年を経過した更新地では,多少の広葉樹と50cm高さ以上のヒノキ維樹が5,000本以上ほヾランダムに更新し,生長も良好であるので針広混交型の複層林に成林する可能性が高い. 次年度以降も引続き多くの事例を調査し,多面的,総合的な解析を行なって混交型複層林の造成を図る予定である.
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