昨年度は比較的新いし複層林施業地として、愛媛県久万地方を取り上げたが、本年度は、古くからのスギ択伐林業地である岐阜県不破郡関ケ原町今須において、典型的な択伐林7林分を選定し、その下木(胸高直径5〜25cm程度)の樹幹形質・材質の調査を行った。 [形質]久万町複層林が小中径木の生産をも念頭にいれ、非常に集約な施業をしているのに対して、今須択伐林は大径材生産を目標とした伝統的な技術によって取り扱われている。このような施業法の違い、あるいは多雪地という地域的な差異が、下木の形質にも現れていた。 (完満性)形状比は光環境が悪いため一斉林植栽木、また、形状比が低いため、胸高直径のわりに枝打ち高が低く、樹幹下部の完満性を示す直径率も小さい。 (真円性)真円性平均値は一斉林のそれよりいくぶん悪い結果となったが、直径階別本数分布の違いに起因すると考えられ、本質的には差はないものと判断された。 (通直性)根元曲がり高は一般に一斉林よりも択伐林に小さい傾向が認められた。しかし、久万町複層林と比べるとかなり大きい。このことは久万町との積雪量の違いと考えられた。幹曲がりは根元曲がりとは逆に、択伐林下木に大きい。 [材質]晩材率、比重、強度などの材質因子は、年輪幅と相関があり、年輪幅が狭いほど大きい値を示した。また、樹心からの距離によっても異なるようであった。さらに試料木(択伐林14本、一斉林7本)によっても変動が大きく、その良否を一概には言えないが、択伐林下木は同じ年輪幅のもので比べても、一般に一斉林植栽木より晩材率、比重が大きい傾向が認められ、強度的には優れているものと考えられた。
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