愛媛県(群状択伐林1、二段林5)及び岐阜県(単木択伐林7)の複層林13林分において、その下木の形質と材質を調査した。 [形質]完満性:樹木全体の完満性を示す形状比は、光環境に左右される。したがって、光環境の一定している一斉林では林分による違いは少ないが、光環境に違いのある複層林では林分による違いが大きい。比較的明るいところに育つ複層林下木は一斉林植栽木より高い形状比を、暗いところに育つものは低い形状比を持つ。これに対して、樹幹下部の完満性を示す直径率は、光環境よりも人為的な枝打ち方法などに影響され、一斉林植栽木との違いはない。 真円性:一斉林植栽木との間に、本質的な違いはない。 通直性:根元曲がりの主因は積雪及びその移動である。したがって、積雪量の多い今須地方、積雪の移動を阻止する上木の無い一斉林植栽木に大きい。これに対して、幹曲がりは複層林下木に大きい。冠雪は幹曲がりの主な誘因ではあるが、その大きさは規定しない。幹曲がりは、幼時からの集約な枝打ちによって、ある程度予防できる。また、年とともに若干矯正される傾向も認められる。しかし、複層林下木に大きなものが生ずる可能性のあることは、最も重要な形質であるだけに、複層林経営にとって重要な問題である。 [材質]晩材率、比重、強度などの材質因子は、年輪幅と相関があり、年輪幅が狭いほど大きい値を示した。また、樹心からの距離によっても異なった。さらに林分、試料木によっても変動が大きく、その良否を一概には言えないが、全般的に二段林の強度が優れ、群状択伐林のそれがやや劣るようであり、また、単木択伐林、一斉林のそれらはその中間にあった。このような結果は、枝打ちによる生長抑制、複層林の光環境、林内孔状地の光環境の特殊性(太陽高度の高いときは全光をうける)などが早材、晩材の形成に影響した結果と推察された。
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