研究概要 |
この研究は,わが国唯一の熱帯的自然環境下にある西表島を対象に,原野・放牧地,農耕地,集落地,林地におけるすべての熱帯・亜熱帯性植物を分類・把握し,資源植物としての有効利用と遺伝子資源の保全をはかるためにおこなったものである。 その結果を要約すると次のとおりである。 1.放牧地の植生は,牧草種外の種が多く,とくに在来種のチガヤ,混入種と思われるフタシバネズミノオが出現頻度,優占度とも高かった。採草地では,牧草種外の混入種,在来植物の構成割合が造成後の経過にともなって変遷する。 2耕地雑草では,サトウキビ畑,パイン畑共通雑草22科59種,水田雑草25科69種が確認された。薬用植物36科69種,帰化植物17科78種が確認できた。全草種では56科305種が確認できた。雑草分布調査ではサトウキビ畑の出現種数176種で,45.7%が帰化植物であった。パイン畑では46種中,22.7%,水田においていは63種中,12.6%が帰化雑草であった。 3集落地の植物は,東部地区において多く,自生種51科83種,導入種61科230種が記録され,自生種よりも導入種が約3培も多く,全種で84科317種が確認された。自生種は,数が少ないので保存が必要である。 4森林の林床植生,着生及びつる性植物は72科141種の植物が確認された。その中には,亜種5種,変種7種,品種5種が含まれている。 5森林資源調査における出現樹種は91種であった。同島には固有植物が14種も分布し,また,分布の特殊性,稀少種,タイプロカリティーとする種が165種も確認され,これらの種の保全が必要である。 6絶滅の恐れのあるクズウコン等12種の資源植物を収集・保存した。 7森林・資源植物分布図を作図したが,今後に課題を残した。 8出現したすべての資源植物についてせき葉標本を作製した。
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