研究概要 |
著者らはこれまでに魚類仔稚期に性ステロイドを投与することによって表現型性を制御できることを示してきたが,それらステロイドの魚体内残留性ひいては食品としての安全性については未検討であった. そこで,ステロイド投与による性転換技法を確立させ,かつその安全性について検討を加えた. その結果,コイ,アユ,ニジマス,テラピア,ペヘレイなど,性によって商品価値の異なる魚種における性の形態学的臨界期を明らかにし,その時期に性ステロイドを投与することによって性比を変化させることが判明した. また,ニジマスにおいて雌化を図るために投与するエストラジオール17βの生体内運命を明らかにするため,^3Hで放射化したエストラジオールを経口投与し,蓄積,分布,排泄および代謝について検討した. その結果,吸収されたエストラジオールは主として胆のう,肝臓,腎臓に分布し,いずれにおいても投与16日以降は平衡に達することが判明した. 排泄状況について検討したところ, 胆のうにおける生物学的半減期は1.5〜2時間,肝臓で2.5〜3時間とかなり速かであった. したがって,仔稚魚に本ステロイドを投与して性転換を図った場合,投与中止とともに体内から速やかに消失するまで,食用サイズに達した段階での残留性は全く心配ないと結論された. 現在,雄性化ステロイドの残留性について検討中であるが,合成ステロイドを使用するため,検出技術に慎重な配慮を必要としている. この点は次年度において解明されるところとなろう.
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