研究概要 |
本年度は, 水位自動計測システム(自記雨量計併設)や自記テンシオメータを用い, 造成地流域(放牧草地・造成畑地・柑橘園)及び山林地流域での降雨量流出量・土壌水分量など水文諸データ収集の効率化を図った. そして, 得られたデータに基づいて, 農地開発が流域の地水循環システムに及ぼす影響を検討した. その結果は次のようにまとめることができる. 1.土壌特性への影響 木耕起造成法による牧放草地では, 放牧等の影響によって乾燥密度が年々増加し, 保水性が悪化する傾向にある. これに対して, 改良山成畑工による造成畑地では, 造成直後に乾燥密度が増大しその後の営農に伴って徐々に回復(減少)する傾向が認められた. 2.流出特性への影響 農地造成が流出特性に与える影響は, 改良山成畑工による造成畑地で著しく, 木耕起造成法による放牧草地では小さい. 特に, 造成畑地の洪水流出特性の変化は著しく, ピーク流量・直接流出量は山林地の2〜3倍に達する. 一方, 低水流出特性は流域固有の地質構造に支配されており, 農地開発の影響は少ないと考えられるが, 低水流出量には蒸発散も関与しているため, 地水循環システムを総合的に評価する必要のあることが指摘された. 3.造成圃場におけるリル発生 造成圃場における侵食の中で, リル侵食の占める役割の大きいことを明らかにし, リルの発生機構を検討した. マサ土や変成岩土についてリル発生限界流量を実験及び現地調査から求め, 現地リル網の解析結果とあわせて, 農地保全上最も適切な斜面長を算定することを試みた. その結果, 変成岩土の場合には, 斜面長を20〜30m以内にとどめるのが適切であろうと推測された.
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