研究概要 |
反芻家畜の生産性の調節に強く関与する代謝性ペプチドホルモンである成長ホルモン、ソマトメジンC、インスリン、グルカゴンの分泌に及ぼす作用に関して行った前年度の研究の結果から、供試した17種のアミノ酸は、それぞれの化学的性質に応じて、各々のホルモン分泌に異なった作用を示すことが明らかになったので、本年度はその中から各ホルモン分泌に特徴的な作用を持つGly,Ala,Val,Leu,Glu,Gln,Argの7種のアミノ酸を選び、アミノ酸給与の実際面を想定して、12指腸カテーテルをとおして、小腸内への注入実験を行った。供試動物は去勢雄めん羊3頭、注入量を6mmol/kg体重/60minとした。全てのアミノ酸で注入後に血漿アミノ酸N濃度の上昇が認められた。その程度はGlyで最も高く、Glnでもっとも低かった。また、前年度において血中に直接アミノ酸を注入した場合の血中アミノ酸Nの上昇は、塩基性>酸性>中性アミノ酸の順であったが、12指腸注入では、中性>塩基性>酸性アミノ酸の順であった。この順位は、小腸からのアミノ酸吸収の強さや、小腸上皮細胞におけるアミノ酸消費の程度を反映した結果を示しているものと考えられる。各アミノ酸によるインスリン分泌反応は、Gly,Ala,Leuにより生ずる反応の著しい促進と、Glu,Gln,Val,Argによる無反応の型に二大別することができた。グルカゴン分泌はGly,Alaによって著しく促進され、Arg,Gln,Gluでは僅かに増加し、Leu,Valでは分泌高進はおこらなかった。GH分泌刺激効果はGlu,Gln,Arg,Ala,Glyで認められたがVal,Leuでは認められなかった。 以上の結果は、ルーメンバイパスアミノ酸給与法が開発されれば、小腸を介して生態に吸収されるアミノ酸を利用して、反芻家畜の生産性に関与するペプチドホルモン類の分泌を人為調節できることを示唆している。
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