研究概要 |
1.mercox注入したヤギ副腎を走査型電顕で見ると数本の皮質動脈が被膜下で分枝して, 皮質球状帯では籠状の, 束状帯では柵状の, 網状帯では蛇行状の毛細血管叢を形成し,漸次洞様血管となり副腎中心静脈に集合する. 2.ヤギ副腎に10%WGAーHRP 10μlを注入し, 標識細胞を検索すると, 標識の大部分は副腎神経節に, 一部はT9〜L2の幹神経節に, 少数のものが頚胸,腹腔,及び前腸間膜動脈神経節に見られ, これらが交感神経節後細胞であることが判明した. T4〜L2脊髄神経節で少数の知覚神経細胞の他,脊髄側角にある小型の交感神経節前細胞も一部標識された. これ迄副腎は例外的に交感神経節前細胞により,直接支配されるという所見は少々疑わしい. 3.acetulcholineoterase(AChE)組織化学をヤギ副腎に行い, 光顕と電顕で観察した. AChE陽性神経束が副腎動脈と共に皮質を貫通し髄質に達した後, 神経叢となり, それからは質に向う線維が現われる. 網状帯にはAChE陽性細胞が見られた. 電顕的に髄質及び網状帯にはAChE陽性の無髄と有髄線維を含む神経束があり,前者は髄質細胞に少数の大型有芯小胞と多数の小型無芯小胞を含む終末部として接していた. 皮質での同型の終末は主として血管周囲腔側から皮質細胞に接していた. 皮質では多数の大型有芯小胞を含むAChE陰性の終末も見られた. 光顕で網状帯に見られたAChE陽性細胞内での反応は, Golgi装置及び粗面小胞体に局在し, 核膜には見られなかった. 4.スンクスの副腎は一般哺乳類のそれに共通するが,下垂体を除去すると球状帯の細胞では大型脂肪滴が出現し, 束状帯と網状帯の細胞ではmitochondriaの小胞状ないし小管状cristaの数が減少し, Golgi装置の萎縮及び遊離ribosomeの数的減少が見られた. この他束状帯では細胞並びに核の萎縮が目立ち, 網状帯では洞様毛細血管の径の退縮が見られ, 下垂体除去による機能低下と判断される.
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