研究概要 |
本年度はサイトカラシンB処理による三倍体胚と正常二倍体胚との間のキメラ胚の移植実験を行うとともに、三倍体胚およびキメラ胚形成率を高めるための体外受精および初期胚培養の条件について検討した。 1.三倍体【tautomer】二倍体キメラ胚の移植、サイトカラシンBを含む培地内で体外受精を行い、第二極体の放出を抑えて作出した三倍体胚と正常な二倍体胚を8細胞期で集合させてキメラ胚盤胞を作出し、偽妊娠第2日の受容雌マウスの子宮へ移植した。その結果、ICR×ICR三倍体胚【tautomer】1CR×CS7BL/6J二倍体胚では47.5% (47/99) 、その逆の組合わせでは34.4% (56/l63) の新生子が得られた。毛色におけるキメラの出現率は前者の組合わせでは26.2%、後者では27.7%で、いずれも二倍体の間のキメラ胚の移植による毛色キメラ固体の出現率 (57.7%) より有意に低い値であった。また、単一毛色の固体はすべて二倍体胚由 来の表現型を示し、三倍体胚のみに由来すると思われる固体は得られなかった。 2.顕微操作による卵丘除去卵子の体外受精、二精子受精による三倍体胚作出を目的として酸性 (PH2.5) タイロード液を充填したマイクロピペットをマイクロマニプレーターに装着し、卵丘除去卵子の透明帯に接触させることで基質を局所的に溶解し、その後に体外受精に用いた。この方法によって卵丘除去卵子の体外受精率は約60%から90%以上へ上昇し、その少なくとも一部は二精子受精卵であることが知られた。 3.体外受精卵の培養条件の検討、キメラ胚作製に至適な発生段階を得るため培養条件について、とくに発生阻害の起きやすい第二卵割前後の条件を検討した。その結果、ある種のキレート剤 (CyDT+,DTPA、DPTAOH) はEDTAよりも微量で発生の改善に有効であること、および前核期からのスーパーオキサイドジスムターゼ (SOD) 添加が胚盤胞への発生を著しく高めることが知られた。
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