研究概要 |
1.産卵鶏の産卵開始前後における肝臓での脂書酸合成能, 肝臓と血漿中各脂質画分含量および血漿中エストラジオールとコルチコステロン濃度の変動を測定し, 産卵開始前後の脂質代謝制御について検討した. その結果血漿中エストラジオール濃度は日齢とともに増加し, 産卵開始直前(150日齢)に最高値を示した. 肝臓と血漿中各脂質画分濃度は140日から150日齢に急速に増加した. そしてこれらの濃度は産卵開始により減少した. 肝臓での脂肪酸合成能は140日齢で最大を示し, 肝臓と血漿中トリグリセリド濃度の最大値より早い時期に最大の活性を示すことが解った. 血漿中コルチコステロンは脂肪酸合成能との相関は観察されなかった. 2.産卵中鶏にトウモロコシあるいは大麦を配合した飼料を給与し, 高温環境下(30〜35℃)で飼育した. そして生体内でパントテン酸からCoAに変換される際の中間物質であるパンテチンを200prn飼料中に添加給与し, 高温ストレスによる産卵率の低下, および脂質代謝, 特に肝臓と腹腔内脂肪組織への脂質の過剰蓄積を抑制する効果があるかを検討した. その結果, 高温環境によって低下した産卵率と卵重はパンテチンを添加することによって改善した. 肝臓中の脂肪酸合成およびコレステロール合成関連酵素の活性はパンテチン添加によって低下あるいは低下の傾向を示し, パンテチンは肝臓での脂肪酸合成能とコレステロール合成能を抑御する効果のあることが推察された. そしてそれに伴って, 肝臓と血漿中のトリグリセリドと全コレステロール含量も低下した. またパンテチン添加によって卵黄コレステロール含量の低下が観察され,低コレステロール卵生産の可能性が示唆される. 産卵中鶏の飼料へのパンテチン添加は血漿中エストラジオール濃度を低下, サイロキシン濃度を増加させた. このことが肝臓での脂肪酸合成能を低下させたものと推察できる.
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