研究概要 |
SAF(scrapie associated fibrils)の可溶化:修飾された宿主蛋白を主成分とするSAFが病原体又はその構成員の一部か病変に伴う副産物かを知るために, 未変性又は可逆的に変性した状態で可溶化する必要がある. 8Mまでのグアニジン塩類は無効であり, 尿素は再現性が無かった. 蒸留水あるいは0.1mMの炭酸アンモニュウムにより部分的に70,000回転の遠心でも沈降しない可容性画分が得られた. しかし可容性のSAFは器壁に吸着しやすく, 時間と共に溶媒から急速に消失した. またセファデックス等のカラムの担体にも吸着するため, さらに精製, 解析を行うことが困難であった. 吸着したSAFは熱SDSにより回収されるが不可逆的に変性し, 生物活性は調べられなかった. このために, 間接的であるが, 不容性SAFの生物活性を調べるために, 可溶化直後から経時的に溶液から吸着消失するSAFの量と感染性との関係をマウス接種を行い検討している. 一方, 感染脳から尿素およびグリセロール勾配遠心によって直後SAF蛋白を可容性の状態で分離することも検討している. 部分的に凝集したもの以外に可容性のSAF蛋白を分取することは可能であったが, 尿素除去の為に透析を行うとやはり透析膜等に吸着しやすく定量的な回収は困難であった. これらの画分の感染性を調べている. SAF画分中の核酸:SAF画分にユニークな核酸が存在しないか否かを核酸分解酵素の阻害剤(EDTA,vanadylーribonucleoside complexes)存在下で核酸画分の調製を行った. 今回使用したSAFの量(〜3mg)からは, 銀染色によって検出される程度の特異な核酸は検出されなかった. 全脳からの特異なRNAおよび低分子DNAの検出も試みたが, 感染および非感染の脳に差が認められなかった.
|