牛疫ウイルスH遺伝子を組込んだワクチンアウイルスベクターワクチンを作成した。これはワクチンPウイルスのHA遺伝子領域に牛疫ウイルスのH遺伝子を組込んだもので、プロモーターとしては、7.5K蛋白あるいはA型封入体のプロモーターを用いた。 (I)合計14羽の兎を用いて、組換えワクチンアウイルス(RVV)のワクチン効果を検討した。ワクチンを接種した群には全例牛疫ウイルス中和抗体の産生がみられた。ワクチン接種4週間後の攻撃実験では、A型封入体のプロモーターを持つRVVで免疫された1羽で、攻撃後一過性の症状が見られた外は、13羽全てが発症せず耐過した。一方対照群であるワクチンアウイルス接種群(5羽)と無処理群(3羽)では、全例発症し、うち4例が死亡した。対照群の兎リンパ組織からは10^4〜10^5の牛疫ウイルスが分離されたのに対し、ワクチン接種群ではウイルスは全く分離されなかった。 (II)(I)でも挿入したH遺伝子は比較的長い非コード領域を持っているため、プロモーター領域は改変し、H蛋白の発現効率が上昇するか否かを検討した。主要な改変は (1) プロモータと開始ユドンの間を短くし、両者間に存在するアウトフレームのATGを除くこと。(2)ATGの直前配列をワクチンアウイルス後期蛋白プロモーター領域にみられる共道配列にすることであった。このように改変すると、前述の様の約10倍の発現量をもつ株が得られた。この株はin vivoにおいても、より低いウイルスカ価で兎に牛疫ウイルスに対する免疫を誘導することができた。 現在牛疫ウイルスの改変H遺伝子をHA領域に、F遺伝子をTK遺伝子領域にも つ、二価の組換えワクチンアウイルスを作成中である。
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