1)牛疫ウイルスH遺伝子を組込んだワクチニアウイルスが、ウサギを用いたモデル実験系で、牛疫ウイルスL株の攻撃試験に抵抗性を賦与することが明らかになったので、このワクチン効果をさらにウイルス学的、病理学的に検討した。組換えワクチン接種群は全例無症状に耐過し、攻撃ウイルス接種後3-5日目に採材した個体からは全くウイルスは分離されず、病理組織学的にはリンパ組織に軽度の変性と代償性の活性化がみられた。他方ワクチン非接種群では、胸腺・脾・腸根リンパ節などから高力価のウイルスが分離され、また病理学的には重度のリンパ壊死・腸炎がみられ、ワクチンの有効性が確認された。 2)牛疫ウイルスNP遺伝子をクロ-ニングし、バキュロウイルスベクタ-に組込み、大量に発現することができた。組換えバキュロウイルス感染細胞から蛋白を粗抽出し、ラテックス粒子に結合させ急速凝集反応による診断方法の確立をこころみている。緩衝液のモル濃度やpHにより結果が安定しない点に問題を残している。一方発現したNP蛋白の抗原性を5種類の異なるエピト-プを認識しているモノクロ-ナル抗体を用いて調べたところ、組換えバキュロウイルス感染細胞でも、この5種類の抗原決定基が全て発現していることが確認された。 3)牛疫ウイルスH蛋白の10領域に対応する合成ペプチドに対する抗体を用いてH蛋白のエピト-プ解析を行ったところ、N末端側の疎水性領域に対する合成ペプチドT9の抗体はウイルス中和能がなく、H蛋白との反応性が低いためエピト-プとはなっておらず、膜内に存在する可能性が高いと考えられた。また親水性領域に対する抗体では抗T2-T7抗体は中和能が高く、抗T1・T8抗体は中和能は低いが免疫沈降でH蛋白と反応することが確認された。これらの領域はH蛋白のエピト-プを構成しており、膜外に存在する可能性が示唆された。
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