牛疫ウイルス(RV)の糖蛋白(H・F)の全塩基配列を決定した。 1.塩基配列からH蛋白はN末端をエンベロ-プの中に、C末端を外に出しているユニ-クな構造をもつことが推測された。H蛋白の10ヶ所の領域に対応する合成ペプチド抗体を用いて解析したところ、C末端側がエピト-プを構成しており、膜外に存在する可能性が示唆された。 2.F蛋白の塩基配列から、この蛋白がプロテア-ゼによる開裂部位をもち、糖鎖はF2蛋白にのみ3ヶ所付加することが推測された。RV感染細胞をラベルし解析すると、F1、F2に開裂すること、F2は糖が付加しているが、F1には糖鎖が結合していないことが確かめられた。 3.H遺伝子をワクチニアウイルスのHA遺伝子領域に組み込んだ組換えDNAワクチンを作成した。ウサギを使ったモデル実験系では、組換えワクチンを接種した個体は全例RVに対する中和抗体を産生し、攻撃試験にたいして臨床的、ウイルス学的、病理学的に完全に防御されることが確認された。 イヌジステンパ-ウイルス(CDV)の神経毒性を解析した。 4.CDVをin vitroで神経系細胞に順化し、ウイルスが神経毒性を獲得する機序を明らかにすることを試みた。ウイルスを順化すると神経毒性は強くなるが、これは主にウイルスゲノムの変化と糖蛋白の変化によるものであることが示唆された。 5.ニホンザル間にCDVの流行が起こり、そのうち一匹がCDV脳炎をおこしたことを証明した。これは霊長類がCDVに自然感染し脳炎を起こすことを示した世界で最初の報告である。 6.新世界ザルに属するリスザルがCDVにより激しい脳炎を起こすと共に、全身性痙攣発作を頻発することが明らかになり、ウイルス誘発性"てんかん"のモデルになり得ることが示唆された。
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