研究概要 |
腎症候性出血熱ウイルスの流行巣で捕獲されたげつ歯類について血清疫学的調査と臓器内抗原検索を実施し,自然界における本ウイルスの伝播機序を検討するとともに,各種国内分離株の病原性を比較した. 1.北海道上磯町のゴミ処理場のHFRS流行巣のドブネズミのおける血清疫学的調査では,抗体陽性例は主に5ヶ月齢以上の成熟個体に限られ,また肺組織での抗原検出はIFA抗体価512倍以上のものが最も多かった. さらに抗体と抗原の共有例も加齢とともに増加し,持続感染の成立が示唆された. 2.流行巣周辺で捕獲された野ネズミのうちエゾヤチネズミとエゾアカネズミから抗体陽性例が1匹ずつ検出され,本道の野生げつ歯類への本ウイルスの自然伝播と汚染の拡大が示唆された. 3.ラット由来SRー11株と上磯町ドブネズミ由来K1ー262株について新生仔ラットの腹腔内接種法により両株の病原性を比較した. SRー11株感染ラットは運動失調,後肢麻痺,痙攣などを示して約20日目で死亡した. しかし, 10週齢以上のラットは無症状で耐過した. また,K1ー262株では新生仔でも不顕性感染を示すのみで発症例は認められなかった. 4.娠娠20日目の免疫ラットの胎仔から抗体が検出された. また,免疫ラットから授乳された新生仔ではIFA抗体価は生後2〜3週目までに約2048倍に達した後次第に低下し,約8週目に〓転した. さらにウイルスの攻撃接種に対してラットは抗体価8倍でも感染施抑を示し,母子免疫の成立が認められた. 5.SRー11株とK1ー262株について限外稀注釈法とフォーカス形成法を組合せてウイルス純化法を確立し,VeroーE6細胞における各純化株の増殖性を比較した. SRー11株由来化株の感染価はいずれも原株より著しく高く,CPEも示した. しかしK1ー262株由来純化株の感染価は原株と同様に低く,CPEを示さなかった.
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