臓器固有ナチュラル・キラ-細胞(ピット細胞)の研究

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 62480091
• 研究機関: 東京医科歯科大学
• 研究代表者: 和気 健二郎 東京医科歯科大学, 医学部, 教授 (00046963)
• 研究分担者: 金田 研司 東京医科歯科大学, 医学部, 助手 (30161186)
• キーワード: ナチュラルキラ-(NK)細胞 / rod-cored vesicles / 腫瘍細胞傷害 / 微小管

研究概要

ナチュラルキラ-(NK)細胞による腫瘍細胞傷害メカニズムとして現在最も関心をもたれているのがパ-フォリンを含むとされるdense granulesである。もうひとつの特徴的な小器官であるrod-coredvesicles(RCVs)に対しては、あまり注意が払われていなかった。今年度の研究では、このRCVsが、腫瘍細胞傷害時に、NK細胞の細胞質内でどのような分布をするかを、電顕により詳細に検討した。OK-432を前投与してNK活性を高めたラットの脾より分離したリンパ球をYac-1細胞とco-cultureし、1〜2時間後に電顕でしらべた。(我々は、すでに、OK-432によって活性が亢進したNK細胞においてRCVsが増加することを報告している)。Yac-1細胞に接着したNK細胞のゴルジ装置、dense granules、RCVsは、腫瘍細胞を向き、NK細胞の細胞質突起も腫瘍細胞内へ伸びていた。RCVsはゴルジ装置から形成され、中心体付近に集められた後、そこから腫瘍細胞との接着面に向かって伸びる微小管に沿って運搬されると考えられた。接着面でのRCVsの開口分泌像は観察されなかったが、RCVsが、dense granuleとともに、腫瘍細胞傷害において何らかの重要な役割を演ずることが強く示唆された。NK細胞が接着した腫瘍細胞は、当初、intactな像を保っているが、傷害の進行につれ、小胞体内腔の拡張、空胞形成、細胞内小器官の分布の乱れ、核クロマチンの凝縮およびblebの形成による細胞外形の変形などがみられた。
現在、NK細胞による腫瘍細胞傷害のプロセスを経時的に観察する目的で、倒立位相差顕微鏡下で映画を撮影し、その解析を試みている。

研究成果

• [文献書誌] Kaneda,K.,Matsuura,Y.,Uehara,K.,Yano,I.,Wake,K.: "In vivo defensive role of pit cells in the liver." Cells of the Hepatic Sinusoid. 2. 221-223 (1989)
• [文献書誌] Kaneda,K.: "Liver-associated large granular lymphocytes,Morphological and functional aspects" Arch.Histol.Cytol.52. 447-459 (1989)
• [文献書誌] Weke,K.,Decker,K.,Kirn,A.,Knook,D.L.,McCuskey,R.S.,Bouwens,L.,Wisse.E.: "Cell biology and kinetics of kupffer cells in the liver" International Review of Cytology. 118. 173-229 (1989)
• [文献書誌] Kaneda,K,.Wake,K.: "Ultrastructural study of in vivo tumor cells lysis by liverassociated natural killer cells." Biomedical Research. 11. (1990)
• [文献書誌] Kaneda,K.,Dan,C.,Kataoka,K.,Wake,K.: "Intracellular distribution of the secretory vesicles(rod-cored vesicles)in OK-432-activated rat natural killer cells during the cytolysis of the bound tumor cells" Laboratory Investigation.
• [文献書誌] 和気健二郎: "臨床肝臓病学" 朝倉書店, 634 (1989)
• [文献書誌] 和気健二郎: "臨床生理学シリ-ズ5「肝臓」" 南江堂, 294 (1990)