本研究において、肝固有ナチュラルキラ-(NK)細胞が、肝の腫瘍に対する防御システムの重要な構成員であることが形態学的に明らかとなった。 1.肝内でのNK細胞の腫瘍障害作用について。 i)実験的に門脈より注入したYac-1腫瘍細胞が、注入1〜2時間後に、肝NK細胞により傷害を受けていることが形態学的に示された。この際、in vitroでの観察同様、NK細胞の果粒およびrod-coredvesicles(RCV)が傷害作用に関することが示唆された。肝内においては、NK細胞は単独で働く他に、クッパ-細胞との協同により腫瘍細胞を貪食することが示された。これまで、肝NK活性亢進によって実験的腫瘍転移が抑制されることや腫瘍内にNK細胞が浸潤していることから、肝NK細胞が肝において腫瘍細胞を傷害することは示唆されていたが、微細形態学的に示されたのは本研究がはじめてであり、直接的な証拠を提供したといえる。 ii)ヒト肝がんの外科的摘出材料においてNK細胞を電顕観察した。しかし、原発性肝がんにおいては、早期に被膜が形成されるため、がん周囲にNK細胞の浸潤はみるものの腫瘍細胞との直接的な接触は認められなかった。 2.NK細胞の細胞内小器官の分布と傷害作用の関連性。 i)脾あるいは肝より分離したNK細胞とYac-1細胞をin vitroでco-culturel、2〜3時間後に電顕で観察した。NK細胞のゴルジ装置、果粒、RCVなどは、Yac-1細胞に接着後、腫瘍細胞の方を向き、特にRCVは、中心体から腫瘍細胞にむかってのびる微小官に沿って並んでいた。RCVはNK細胞に特有の構造物で、ゴルジ装置から形成される分泌果粒であるが、本研究において、RCVが、NK細胞の腫瘍細胞に対する傷害作用に重要な役割をすることが示された。 ii)位相差顕微鏡による腫瘍細胞傷害過程の観察。現在、この過程の映画撮影をおこなっている。
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