研究概要 |
(1)長期間低ヨード食で飼育し, フィードバックにより下垂体からのTSHの分泌を盛んにしたラットの甲状腺の毛細血管の立体構築,超微構造, 内皮細胞の増殖能などを観察し, 腺の分泌機能に対応する血管の可塑性を光学顕微鏡と透過型電子顕微鏡で観察した. 低ヨード食で, 3ヶ月, 6ヶ月, 1年間飼育したラットの甲状腺では, 濾胞上皮細胞の丈が著しく高くなり, 濾胞腔は非常に小さくなるが, 濾胞の単位は存在しつづける. 走査型電子顕微鏡を用いた血管鋳型像では, 正常と同じように濾胞を囲む籠状の毛細血管網の単位は明瞭であるが, 籠を作る毛細血管の直径は, 正常では5ー15μmのものが, 1ー35μmと極めて不揃いになる. 全般的には著しく拡張し, 毛細血管同志の吻合がふえ, 発芽を思わせる盲端像も多数見られる. 透過型電子顕微鏡でも, 不規則に拡張した毛細血管腔が, 隣の毛細血管腔と融合する像がしばしば認められる. 毛細血管の内皮細胞は, 血管腔側に多数の突起を出していることが多く, 厚くなった細胞質には粗面小胞体が発達し, 蛋白合成の盛んなことを思わせる. また, 毛細血管の新生像もみられる. 毛細血管内皮や濾胞上皮細胞の^3Hーチミジンを取り込む細胞の数は, 正常では殆どないが低ヨード食によりいちじるしく多くなる. (2)ハムスターの胃に分布する毛細血管の立体構築を走査型電子顕微鏡で観察した. 前胃では粘膜固有層の毛細血管はほぼ水平に走る, 二次元の網を作る. 胃体部では毛細血管は粘膜固有層の中を縦方向に上行し, 粘膜上端で太くなり洞様毛細血管に注ぐ. 洞様毛細血管網はすぐに小静脈に注ぎ, 固有層の中を垂直に下行する. 数日間絶食を続けても毛細血管の分布, 立体構築, 太さに著変を示さない.
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