1)長期間低ヨード食で飼育し、フィードバックにより下垂体からのTSH分泌を盛んにしたラットの甲状腺における毛細血管の変化を観察し、腺の分泌機能に対応する血管の可塑性を追求した。低ヨード食で飼育したラットの甲状腺は光顕像では、濾胞上皮細胞の丈は高くなり濾胞腔は小さくなるが、濾胞の単位は存在しつづける。周囲の毛細血管は不規則に拡張し、毛細血管同士の吻合がふえ、発芽を思わせる盲端像も多数見られる。毛細血管の内皮細胞は、血管腔側に多数の突起を出していることが多く、厚くなった細胞質には細胞内小器官がよく発達している。また毛細血管の新生や融合を思わせる所や、毛細血管の内皮細胞が偽足状の突起を出している所では基底膜が厚くなったり、消失したりしている。毛細血管内皮や濾胞上皮細胞の^3Hーチミジンを取り込む細胞の数は著しく多くなる。このようにフィードバックによって下垂体のTSHの分泌を盛んにすると、濾胞上皮細胞は強い機能亢進像を呈し、それに対応して毛細血管は強い可塑性を示す。 2)ハムスター胃の粘膜固有層の毛細血管網の立体構築は部位により異なる。前胃では漿膜面より入ってきた動脈は、分枝して薄い粘膜固有層内で水平に走る毛細血管網を作る。胃体部では筋層から入ってきた動脈は粘膜下層で分枝し毛細血管となって粘膜固有層の中を胃の内腔面に向かって上行し、粘膜上端で洞様毛細血管網を形成する。ついで、すぐに太い小静脈に注ぎ固有層の中を下行する。胃前庭部の粘膜は、多数の盛り上がったヒダ状の単位を作る。その固有層の中を多数の毛細血管が上行し、粘膜表面の直下でやや太い毛細血管網に注ぎ静脈に入って下行する。絶食条件下においても、粘膜固有層の毛細血管や粘膜表面直下の洞様毛細血管網の構築、太さなどに大きな変化がみられず、血流は正常時と変わらないと考えられる。
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