研究概要 |
微小血管の生長と節区分の分化の過程を形態学的に解明すべく, 現在下記の材料と方法によって研究を展開している. 1. ラット乳腺内血管の新生増殖について 授精後, 授乳期, 授乳停止後における乳腺小葉内微小血管の変動を, 合成樹脂及び墨汁注入標本についてそれぞれ走査型電子顕微鏡及び光学顕微鏡的に形態計測を加え解析を行った. 授精直後から微小血管網は, 出芽と吻合によって著しい増殖を遂げ, 授乳期直前に最も緻密な血管網を形づくる. この時期, 腺終末部の大きさと形状を反映して, 血管網は非常に規則正しい構築を示すが, 授乳期では, 血管網は疎となりその構築も不規則となることを明らかにした. 2. ラット腸管膜血管発生の研究 腸管膜血管は胎生期から出生直後にかけて著して生長を遂げるが, この血管について, その節区分の分化を明らかにするため, 一方では干渉位相差顕微鏡による血流動態を観察し, 一方ではFーアクチンを選択的に染めるファラシジンを用い, 血管平滑筋細胞と周細胞の形態分化を明らかにしつつある. 細動脈については一応の観察を終わり, 発生初期には短く, 不規則な走行を示す平滑筋細胞が次第に伸長し輪状配列を示すにいたることをあきらかにした. 3. 実験的発生腫瘍内血管についての研究 DMBAの経口投与によって実験的に発生したラット乳腺腫瘍内及び腫瘍周囲の血管について, 前述の合成樹脂注入標本, 及び血管外膜結合組織除去法を施した試料の走査型電子顕微鏡による観察を行い, 微小血管の異常な増殖過程と, 多形態性を示す血管平滑筋と周細胞の形状を明らかにした.
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