今年度は前年度に引き続き、ラット歯状回顆粒細胞のスパインの形態についてさらに詳しい検討を行った。 1)いわゆるずんぐり型の大型スパインは樹状突起近位部、中間部、遠位部でそれぞれ1.1%、1.5%、1.1%と極めて少数であり、それぞれ42%、27%、20%を占めるとゆう従来の報告と著しい異いを示した。 2)頭部径0.8μm以上の大型スパイン全体として見ると、近位部、中間部、遠位部でそれぞれ3.7%、11.2%、12%であり近位部で少く遠位部に向って比率が高い傾向を示した。それでも10%を大きく越さない事が分った。 3)一方、頭部径0.4%以下の小型スパインは、近位部、中間部、遠位部でそれぞれ61%、45%、51%であり、従来の所見と異り近位部で特に小型スパインが多い事が分った。またこれらの小型スパインの中には多数の糸状スパインが含まれていた。 4)樹突起1μmあたりのスパイン密度は近位部、中間部、遠位部でそれぞれ3.4、2.3、2.0であり従来の所見に較べてそれぞれ2.1倍、1.4倍、1.3倍であった。これらの所見はすべて従来の光顕により検索では密接したスパインが解像されず大型スパインと認定されていた事を示している。 5)中間部および遠位部では樹状突起前後にあるスパインも透視解像されるため問題ないが、近位部では樹状突起径が大きく電子密度が高いため陰の部分のスパインを見落す可能性がある。この検定を行うため、2〜3μmの横断切片をつくり、1μmあたりのスパイン数の計測を計量した。立体写真の視差から正確な樹状突起の長さを測定する作業に時間がかかるため統計処理を行うに充分な例数を集めるため目下実験を継続中である。
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