研究概要 |
吾々は超高圧電顕の優れた解像力、高い透過能、深い焦点深度などの特性を利用して樹状突起棘(ds)の三次元定量解析を行った。 1)方法の検討:三次元精密定量解析のため、高精度傾斜試料台の開発、画像強調処理機構の応用、三次元定量解析のためのプログラム開発を行い、このシステムの精度検定、問題点の検討を行った。この論文は平成元年度日本電子顕微鏡学会論文賞を受けた。 2)成果:成熟白ねずみ歯状回顆粒細胞のゴルヂ染色標本を用いた。厚さ5μmの切片を作り、超高圧電顕で立体写真とを撮り、画像処理装置(ルゼクス-5000)によりdsの三次元計測を行った。 a)dsの形状:茸状、杯状、糸状などがあるが、柄の直径0.15μm以下のものが70%をしめ、光顕で多数20〜40%)見られる巨大なdsは極めて少数(2%)にすぎなかった。頭部の大さ(長さ、直径)は樹状突起起始部(p)、中部(m)、末梢部(d)について差がなかった。 b)dsの密度:樹状突突起1μmあたりの密度はP,m,dについて夫々3.4、2.3、2.0であり、光顕の1.5〜2倍を算した。 c)dsの長さ:dsの三次元の長さは平均1.25μmであり、2次元計測値の約1.4倍であった。 d)樹状突起表面積はds表面積がくわることにより約2倍となることが分った。 3)結論および将来の展望:超高圧電子顕微鏡による三次元定量解析法はdsの精密な解析に極めて有効であり、この目的のためには光学顕微鏡の解像力では不十分である事が分った。今後この方法によって中枢各部位における種々の神経細胞についてのdsの精密解析が行われることによって中枢回路機能の解明が進ことが期待される。
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