研究概要 |
本年度は従来未確定であった塩基性アミノ酸輸送におけるカチオン駆動機構について焦点を当てて研究を行い, 以下のことを明らかにした. 骨近位尿細管でのLーリジンの刷子縁膜での輸送は, 完全に無Na^+にした条件下でも濃度勾配に逆って行なわれ,かつ起電性と発揮する. 起電性の上り坂輸送にH^+が配与している可能性は, 管内潅流液のpHを種々変えて観察した実験で, H^+/ペプチド共輸送に見られるような低pHによる脱分極の増強が全く見られないこと,とり込みは逆に抑制されることから否定され,かつ中性アミノ酸の共存によって脱分極が著明に抑制されることから, Lーリジンのεーアミノ基の荷電の輸送が直接起電性に関与していることが明らかになった. 一方無Na^+条件下でのLーリジンの組織内とり込みは単純なMichaelisーMenten速度論に従がわず,脱分極反応も時間と共に小さくなる. 無Na^+条件下でリジン脱分極を記録しつつ, 側底膜側にNa^+を加えると, 脱分極は増大し, 組織内とり込みもMichaelisーMenten速度論に従うようになる. Na^+存在下でのリジン脱分極はプラトーを維持し, 管内液からリジンを除去すると, 過分極反応を示すことなく単純に元のレべルに戻る.これらのことは, 細胞内より側底膜を通つての輸送がNa^+依存性で, 非起電性の機構でNa^+がリジンの汲み出しを駆動していると解釈される. 非起電性の駆動機構としては, 1:1の連結比による逆輸送過程が最も可能性の高いものとして考えられる. 以上の機構は, 従来知られている糖,中性アミノ酸,酸性アミノ酸,小分子ペプチドの能動輸送のカチオン駆動機構とは全く異なるものであり, 極めて独特のものであるて云える. 今後更にこの機構を確かなものとして裏づける方法として, ウワバインによるNa^+ーK^+ポンプの抑制,Na^+サイトの抑制剤であるハーマリン,アミロリド等の効果等を観察する必要があると考えられ, 目下研究を続行中である.
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