研究概要 |
一般に多くの細胞は, 低浸透圧環境下に置かれたときに一過性に物理的膨張を示したのちに, 正常体積へと復帰するところのregulatory volume decrease(RVD)を示す. この容積調節に関与するのはK^+チャネルとCl^-チャネルであることを我々は既に明らかにしている. 本年度の研究では, 遺伝子的に各分化段階が明確な培養B細胞系(preーpreーB,preーB及びB細胞)に細胞容積測定法を適用し, その容積調節能とB細胞分化段階の対応関係を調べること, そして容積調節に関与するK^+チャネルとCl^-チャネル活性のB細胞分化段階における違いを推定することを目的とした. 用いた細胞は, preーpreーB細胞としてSCIDー7,preーB細胞としてDW34細胞, B細胞としてDW8細胞を, また腫瘍系preーpreーB細胞としてAbelsonーtransformed AT11ー2ー5ー1ー5ー3ー44ー16ー1ー2ー2ー1,preーB細胞としてAT11ー2ー5ー1ー5ー3ー44ー17などの細胞株を用いた. その結果, 正常系・腫瘍系を問わずpreーpreーB細胞では他の多くの細胞系(例えだT細胞)と同様にすばやいRVD能を示すのに対して, B細胞及びpreーB細胞ではいずれもRVD能が極めてとぼしいことが明らかとなった. 従って, preーB以降の分化段番で, 容積調節に関与するK^+チャネル又はCl^-チャネルのいずれか又は両方が機能しなくなっているものと考えられた. DW34細胞に低張負荷を与えた後にカチオンイオノフォアーであるグラミシジンを投与したところ容積調節が誘起されたので, Cl^-チャネルの方は機能しているがK^+チャネル機能が欠損していることが推定された. 次年度では, パッチクランプ法を適用し電気生理学的にイオンチャネル活性を記録し, B細胞分化レベルにおけるK^+及びCl^-チャネル活性の差異を直接的に証明したい.
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