一般に多くの細胞は、低浸透圧環境下におかれたときに一過性に物理的膨張を示した後に、正常体積へと復帰するところのregulatory volume decease(RVD)を示す。この容積調節に直接的に関与するのはK^+チャネルとCl^-チャネルであることを私達は培養小腸上皮細胞を用いて既に明らかにしている。昨年度における本研究では、遺伝子的に各分化段階が明確な培養B系細胞株(preーB、preーB及びB細胞)に平均細胞容積測定法を適用し、(1)RVD能はpreーpreーBからpreーBへの分化を境にして失われることが明らかとなり、(2)preーpreーB細胞のRVDは小腸上皮細胞と同様にK^+及びCl^-チャネルの活性化によりもたらされていることが強く示唆され、(3)preーB細胞ではK^+チャネルの活性化のみが欠落していることが推定される結果を得た。本年度はパッチクランプ全細胞記録法によるチャネル電流の直接的観察によって、上記の点に対する直接的証拠を得ることを目的とした。その結果、アーベルソンpreーpreーB細胞株では低張負荷後にK^+チャネル電流とCl^-チャネル電流の賊活化が見られるのに対して、preーB細胞株ではCl^-チャネル電流の活性化はみられるがK^+チャネルのそれは全く見られないことが明らかとなった。preーpreーB細胞のこのK^+チャネルの電流ー電圧等性はCa^<2+>依存性K^+チャネルに特徴的なベル型特性を示した。Cl^-チャネルのそれはむしろ直線的特性を示した。以上の結果から。マウスB細胞はpreーpreーBからpreーBへと分化する際に、何らかのメカニズムにより、容積調節性(おそらくCa^<2+>依存性)K^+チャネル機能を喪失することが結論された。
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