研究概要 |
初年度であることから, まず画像・神経活動を同時に記録・解析するシステムを作成し, 使用可能とした. 次に研究の第一段階として, まず補足運動野の細胞活動の動態に関する基礎的な解析を行い, 次にそれらの活動を示す部位の微小局在マップを作成することをめざした. その目的のために, 日本ザルを訓練し, (1)光・音信号および振動による体性感覚刺激を契機として反応応答による運動, (2)一定の待機期間中の運動抑止および(3)自発性に開始された, 随意開始性運動の課題を行わせた. 訓練終了後, 無菌的手術操作により, 記録用シリンダーを装着し, これを用いて, 微小電極の刺入を行い, 随意運動遂行中の細胞活動を記録した. 霊長類の帯状回細胞活動に関する従来の報告は少なく, 系統的かつ詳細なものは無いことから, その全域に亘る広汎かつ綿密な解析が必要であった. そのために, 帯状回の吻一尾側方向に45mmに亘って, 連続的に, かつその全ての深さに及ぶ細胞活動記録を行った. まず入力応答として, 光・音および体性感覚信号に対する応答が得られたので, それらの潜時及び活動変化量を解析し, 次にその応答の空間的分布を調べるために, 組織学的手法を用いて微小電極刺入部位の再構成を詳細に行った. また, 運動に先行する活動を解析したところ, 随意開始性の際にも, 感覚性トリガー運動に際しても, いずれも先行活動のみられることが知られた. それらの活動の空間的分布も調べることができた. 以上の実験的知見は, 補足運動野の細胞活動の基本的な特性を示すものである. この研究の本来の目的に加えて, 副次的な研究成果が得られた. それは, 大脳運動野・補足運動野および運動前野における細胞活動の機能的特性の比較検討に関するものであった.
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