研究概要 |
1.光分解性P^3-1-(2-ニトロフェニル)エチルアデノシン三燐酸(caged ATP)の合成。 Caged ATPは、細胞内ATPaseによって代謝されないが、波長350nmの光照射によってATPを放出する。caged-ATPの合成は新しく開発された1-(2-ニトロフェニル)ジアゾエタンを用いて、ATPのγ位の燐酸を選択的にアルキル化する方法(Walker,Reid,McCray及びTrentham,J.Am.Chem.Soc.,1988,110,7170-7177)によった。caged ATPの合成及びそのレーザ光分解については、昭和63年度大分医科大学招へい教授であったE.Homsher博士の協力を受けた。 2.パルスレーザ(波長347nm)の発生。 Caged ATPの光分解のため、巨大パルスルビーレーザ光から波長変換によって波長347nm、出力最大約100ミリジュールの光ビームを得ることができた。この光ビームは、直径約8mmの円形であるが、有効に筋線維を照射できるよう円筒石英レンズを用いて集光した。 3.Caged ATPの光分解による筋線維の弛緩。 ウサギ腸腰筋グリセリン処理筋線維が、Caged ATPを加えた硬直液中で、レーザ光照射により急速に弛緩するとの報告を追試確認することができた。(Goldman,Hibberd及びTrentham,J.Physiol.1984,354,577-604)。 4.Caged ATPの光分解による筋収縮の動力学の研究。 本研究の初年度(昭和62年度)に、グリセリン筋の収縮に及ぼすエチレングリコールの効果について調べた。その結果エチレングリコールは収縮蛋白の周辺に存在する水分子に効果を及ぼすことによって、さまざまな収縮特性、とくに動力学的特性に影響を及ぼすことが推測された。現在Caged ATPによる研究を行い、エチレングリコールの収縮に及ぼす効果の動力学的研究を進めている。
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