研究概要 |
Tumor Necrosis Factor (TNF)は, 白血球産物の一つで抗腫瘍作用がある. そのほかに発熱作用がある. 家兎に静注すると, 少量では単峰性の発熱が, 大量では2峰性の発熱がみられると報告されている. しかし現在までその発熱の機序についてはまだ明らかにされていない. 一方典型的な発熱は, 細菌,エイルスなどの感染時にみられる. 細菌外毒素の発熱をひき起す有効制分は, リポ多糖Lipopolysaccharide(LPS)である. 実験的発熱の研究においては, LPSによる発熱(LPS発熱)が最も多く用いられている. LPS発熱は, LPSが免疫活性食細胞に働くと, 内因性発熱物質endogenous pyrogen(EP)が作られ, EPが血流によって脳内に運ばれ, プロスタグランジンなどのメディエイターを介して体温調節中枢に作用することによってひき起される. 最近インターロキン1(ILー1),インターフェロン(IFN)とTNFがEPとして作用していることが明らかにされた. しかしILー1,IFN,TNFなどそれぞれのEP候補の作用とその機序についてはまだ明らかにされていない点が多い. そこでTNFの発熱機序に関する研究の第一歩として, 昭和62年度にはまずLPS発熱にTNFが関与しているかどうかについて検討し, 以下の結果をうることが出来た. 1)LPS投与後, 1時間をピークとして血中TNF濃度が上昇した. 2)TNFの静脈内投与により直腸温が上昇した. 3)TNF抗体を投与すると, LPS投与後にみられる発熱過程で, 投与2時間以降の発熱が著明に抑制された. 以上の結果から, LPS発熱にTNFが関与しているものと推定される. 今後さらに, TNFの発熱機序と, TNFのLPS発熱における役割について検討を加えてゆきたい.
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