研究概要 |
本研究は脳による免疫系の制御という問題攻略の第一歩として, 免疫系の発する化学信号に対し, 環境適応ホメオスタシス系を統御する視床下部がどのように応答し, 如何なる適応反応を発現するかを明らかにする目的で, 体温及び摂食調節系における免疫制御物質の作用を調べ, 次の点を明らかにした. I.視束前野ニューロンに対する作用:(1) ヒトILー1及びγIFNαは, それぞれ生理的濃度で, 視束前野の温ニューロン活動を抑制し, 冷ニューロン活動を促進するものが多く, 非温度感受性ニューロンには無効のものが多い. (2) ILー1βとIFNαは primaryの温度ニューロンに, シナプス伝達を介さず, 直接作用する.(3) ILー1の効果は, ホマホリパーゼA_2阻害物質やcyclooxy genase inhibitorで可逆的にブロックされることから, ILー1の効果の出現には, アラキドン酸カスケードのcyclooxygenase系の物質の産生が必要である.(4) IFNαはニューロンのオピエート受容体に作用してその効果を発現する. II.脳室内投与の効果:(1) ILー1及びIFNαをラットの第3脳室内に投与すると, それぞれ発熱を惹起する. (2) それらの発熱はそれぞれサリチル酸ナトリウケ, 及びナロキソンでブロックされ, 視束前野温度ニューロンレベルで得られた知見と一致する. III視床下部肢四側核(VMH)ニューロンへの作用:(1)IFNαは, ニューロン活動を促進するものが多く, その効果はナロキソンでブロックされるが, サリチル酸ナトリウム, αMSHではブロックされない. (2) ILー1でVMHニューロン活動の1/3が促進, 1/3が抑制を受けた. (3) このILー1の作用は, サリチル酸ナトリウム, αMSHで阻害される. (4) グルコース受容細胞は両者で促進されるものが多く, これら刺激物質による食欲減退の一部を説明できる.
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