研究概要 |
昭和62年度内には動物(ナキウサギ)とヒト(暑熱ー運動鍛練者)を用い年度当初の研究計画・方法に基ずいて実験が実施され所期の目的を達成し,一部は学会・専門雑誌に発表し,成果の大略は目下投稿準備中である. I, ナキウサギ(pika)による体温調節能・発熱特性の検索: 私共は,ナキウサギは寒冷耐性,暑熱負荷に弱いと報告して来たが,今回,(1)家ウサギ(アルビノ)と同一暑熱負荷条件下で熱放散能の出力を比較,30-40℃,60%rhでウサギにみる浅速呼吸(パンティング)がナキウサギには欠落している亊,40℃,60%の条件でナキウサギは直腸温44℃,43.1℃に上昇,生存出来ないが家ウサギは持続生存可能にて後遺症もない亊を観察,(2)ナキウサギの発熱特性に関する実験結果は(a)無麻酔・無拘束のナキウサギに外因性発熱物質(LPSーpyrogen)を3.8μg/kg静注し,直腸温上昇(ΔTre)0.73℃および体温調節の熱産生反応を記録,ナキウサギの発熱特性を発熱曲線から解析に成功した. (b)更に0.5〜2.0μg/kgの内因性発熱物質(インターロイキンl,rh ILー1α)を静注し,直腸温上昇(ΔTre)0.5〜1.5℃を認め,ナキウサギの発熱特性を立証した. (3)(a)ヒトの対暑反応,特に日本人スポーツマンと熱帯地住民の高温低湿サウナ反復負荷による実験結果では熱帯地住民は暑熱負荷(60%)の第一回目から対暑反応に順化獲得がみられたが日本人選手では5回の負荷を要した. また,両者間に核温上昇率や心拍・脈圧に軽度の暑熱適応変化があったが,結果として運動トレーニングが生体反応の季節変動の調整や暑熱順化の形成過程に大きな役割を果している亊,(b)高温低湿サウナによる暑熱ー運動負荷の交叉適応の解析に関する実験結果は熱帯地非スポーツマンの熱耐性は遺伝的に獲得されたものであるが日本人スポーツマンの熱耐性は暑熱と運動の協調による体温調節反応量の増加によると帰結出来る実験データを得ている.
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