暑熱・寒冷順化の形成過程における体温調節および発熱反応の解析

1988 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 62480116
• 研究機関: 長崎大学
• 研究代表者: 小坂 光男 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (30079983)
• 研究分担者: 松尾 幸子 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助手 (80039916) ; 松本 孝朗 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助手 (60199875) ; 大渡 伸 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助手 (80128165)
• キーワード: 暑熱 / 寒冷順化 / 視床下部外中枢温度感受性 / ナキウサギ(pika) / 家ウサギ / 甲状腺機能亢進 / 低下症 / 脳血流 / 発汗測定 / 甲状腺ホルモン測定 / アルゴンレーザー / 水素クリアランス法 / 温度順化 / 体温調節機序

研究概要

昭和63年度は前年度の実験の補完に努めると共に、動物(ナキウサギ、家ウサギ)とヒト(対照被験者と暑熱一運動鍛練者)を用い熱放散能の反応指標として皮膚血管拡張、温熱パンティング、発汗反応の誘起・解析を実施し、初期の研究目的をほぼ達成し、学術雑誌にも順次発表した。
(1)ナキウサギ(pika)の弱熱放散能、ナキウサギの熱放散能の解析結果は、家ウサギは30℃〜33℃、60%rhの条件下でパンティングの誘起が可能であるのに反し、ナキウサギでは呼吸数の増加は皆無であり、40℃、60%rhでナキウサギの直腸温は急上昇し43.1〜44℃で死亡するが、この条件下で家ウサギの死亡例はなく、ナキウサギの弱熱放散能を裏付ける結果を得た。
(2)アルゴンレーザーによる家ウサギPO/AHおよびRF加温による中枢性温度センサーの比較・解析:無麻酔ウサギのPO/AHを45mW、1Pmin加温して直腸温、耳介皮膚温、呼吸数、脳温を測定、脳幹網様体(RF)加温の結果と比較、さらにネンブタール麻酔による熱放散反応の抑制を記録解析し発表した。
(3)温度順化形成過程における視床下部血流変化:温度順化と視床下部血流量の相関を求めて、水素クリアランス法のInitial slobe解析にて脳血流量(CBF)を測定し、CBFは外気温上昇および発熱物質(LPS3μg/kg)投与によって約20%、増加するが、30℃、4weeksの暑熱順化や10℃の寒冷順化ウサギではこの増加を認めず、CBFのHabituation Phenamenonが観察された。
(4)各種ホルモンの発汗への影響;容量式湿度計-発汗カプセル法を用いて甲状腺ホルモンの発汗への影響を検索、甲状腺亢進症では発汗潜時は10.6分、対照の(15.6分)に比し短く、発汗量は66mg/カプセルで対照の48mg/カプセルに比し多量、甲状腺低機能(橋本病)では潜時30分、発汗誘発なく、一例で56分、他の例で51分の温熱負荷による口腔温の十分の上昇にても発汗を認めず、甲状腺ホルモンの発汗機構に対する直接作用が示唆され、目下他の各種ホルモンと発汗の関係について検索中で、本研究課題の所期の目的を順次達成しつつある。

研究成果

• [文献書誌] Yang.G.J.,et al.: Tropical Medicine. 30(1). 45-48 (1988)
• [文献書誌] Kosaka,M.,et al.: Tropical Medicine. 30(2). 163-174 (1988)
• [文献書誌] Matsumoto,T.,et al.: Tropical Medicine. 30(3). 225-231 (1988)
• [文献書誌] Kosaka,M.,et al.: Abstracts of 5th Intermational Symposium on Hyperthermic Oncology. 54- (1988)
• [文献書誌] Kosaka,M.,et al.: Tropical Medicine. 30(3). 213-218 (1988)
• [文献書誌] Matsumoto,T.,et al.: Tropical Medicine. 30(4). 247-250 (1988)
• [文献書誌] Kosaka,M.,et al.: "Changes in hypothalamic blood flow dueto pyrogen-induced fever.In,Current Research In Hyperthermia Oncology." Academic Press Inc., 151-161 (1988)
• [文献書誌] Ohwatari,N.,et al.: "Heat loss response during local heating of the brain with Argon Laser and influence of anesthesia on heat loss functions of the rabbit.In,Hyperthermic Oncology in Japan'87." Publishing Co.Ltd., 189-190 (1988)