研究概要 |
神経筋接合部における脱分極性遮断薬物の感受性が糖尿病態により増強する作用機序の解明を目的に,申請計画通り,筋細胞の糖尿病態を電気生理学および生化学的方法の二面から追求して,以下の成績を得た. 1.糖尿病態による筋細胞膜の電気生理学的特性の変化:Twich tensionが生ずるに必要な刺激電圧は,糖尿病態では低くなり感受性の亢進が示唆された.その原因を筋細胞膜における修飾に着想し重回帰分析で解析した結果,静止膜電位は時間経過と血糖値に依存して浅くなり,膜コンダクタンスは血糖値に依存して小さくなった.活動電位のover shotも減少し,半値巾が増加. 2.糖尿病態によるスクシニルユリン筋細胞膜結合様式の変化:スクシニルコリンと筋細胞膜成分との結合試験では,正常筋はpositive cooperativityのパターンを示したが,糖尿病態筋はnegative coーoperativityのバターンに変化した.これはスクシニルコリンの結合数は減少したが,親和性は高まったので説明できた. 3.糖尿病態による筋因を細胞Caの影響によると仮定して,そのCa活性を検討した. 糖尿病態によりCa依存性中性プロテアーゼの活性が亢進することを証明した.これは細胞内のCa量が増大する結果であることを,細胞外Caの有無の実験から結論できた. 4.糖尿病態における筋組織中のCa含量の変化:糖尿病態による筋含有Ca量をMg,Fe,Znと同時に測定し,心筋および平滑筋の場合とそれぞれ比較検討した.その結果,すべての筋でCa/Mg比が増大すること,特に糖尿病態が亢進するにつれて,骨格筋内Ca含量が増大してゆくことを明らかにできた.
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