筋細胞膜の糖尿病態修飾による薬物感受性の増強作用機序の研究

1988 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 62480118
• 研究機関: 富山医科薬科大学
• 研究代表者: 木村 正康 富山医科薬科大学, 薬学部, 教授 (60019099)
• 研究分担者: 木村 郁子 富山医科薬科大学, 薬学部, 助教授 (70019131)
• キーワード: パッチクランプ法 / β-ユーデスモール / 糖尿病態 / 筋細胞内の遊離Ca / Ca トランジェント / スクシニルコリン / アセチルコリンエステレース阻害剤 / アセチルコリン受容体チャネルコンダクタンス

研究概要

二年間にわたる継続研究後半の成果は以下の計画4項目すべてについて、ほぼ目標を達成することができた。特に当該年度の重点目標であったパッチクランプ法が短指屈筋で実験的に成功したことは予定通りであった。なお、前年度から展開されたCaトランジェント法の実験では、予想外のエポックが発見できて、計画以上に掘下げることが出来たが、ACh遊離実験では測定法に難渋し、基礎的段階に止まった。
1)β-ユーデスモールによる脱分極性遮断薬の増強効果
スクシニルコリンの脱分極性遮断効果をβ-ユーデスモールが濃度依存的に増強することを確認したが、更に、β-ユーデスモール単独でも糖尿病態筋を増強した。しかも、その増強効果は作用時間につれて強化することを見出したので、β-ユーデスモールが糖尿病態筋細胞膜を修飾することが示唆された。このことからβ-ユーデスモールの正常薬理作用を検討し、脱分極性パターンで遮断するが、その作用点は別の脱感作性機序に関与するらしいことを推測させた。
2)糖尿病態による筋細胞内のCaトランジェントの変動
糖尿病態筋細胞の特性を検討するため、d-ツボクラリンおよびスクシニルコリンの遮断効果における細胞内Ca動員を測定した結果、細胞膜に独立したCaチャンネルが存在する可能性を示唆できた。更に、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤存在では、筋収縮と関連しない新しい第2のCaトランジェント成分が増大することを見出した。
3)骨格筋細胞のCaチャンネル
短指屈筋を用いて、パッチクランプ法でシングルチャネル電流を測定した際に、外液の高Ca^<2+>液やスクシニルコリン存在下で、アセチルコリン(ACh)受容体が介在するチャネルコンダクタンスが減少した。
4)ACh遊離作用の実験は、ラベル法で測定できる可能性を得た。

研究成果

• [文献書誌] Kimura,I;Kondoh,T;Kimura,M: Nature,New Biology. (1989)
• [文献書誌] Kimura,I;Kondoh,T;Kimura,M: Neuropharmacology. (1989)
• [文献書誌] Kimura,I;Nojima,H;Kimura,M: Pfluger Archiv. (1989)
• [文献書誌] Muroi,M;Tanaka,K;Kimura,I;Kimura,M: Japan.J.Pharmacol.(1989)
• [文献書誌] Kimura,M;Kobayashi,S;Fujihara,M;Hoshino,N;Kimura,I: Endocrinologia Japonica. (1989)
• [文献書誌] Kimura,I;Nakamura,T;Kimura,M: Japan.J.Pharmacol.47. 197-199 (1989)
• [文献書誌] Kimura,I;Kimura,M;Kimura,M: "Modification of Ca^<2+> transients by diabetes and denervation in mouse diaphragm muscles stimulated directly.In Polyol Pathway and Its Role in Diabetic Complications.ed.by Sakamot" Elsevier Science, 502-504 (1988)
• [文献書誌] 木村正康、木村郁子、松井哲夫、古林伸二郎: "遺伝性肥満型糖尿病マウスKK-CA^<-1>の病態薬理学的特色-アロキサンおよびストレプトゾトシン糖尿病マウスとの比較-糖尿病動物第2巻" 医薬ジャーナル社, 138-147 (1988)