研究概要 |
1.血管平滑筋の収縮反応におけるカルシウム依存性ミオシン軽鎖リン酸化反応の役割について, 我々が独自に開発したミオシン軽鎖リン酸化酵素の選択的阻害剤MLー9とその誘導体を用いて検討した. まず, MLー9の作用の特異性や作用様式について蛋白分子レベルでの解析を行なった.MLー9は平滑筋や血小板由来のミオシン軽鎖キナーゼの強い阻害作用を示した(Ki=3.8μM). その作用は選択的で, 他のキナーゼやホスホジエステラーゼ阻害のKiは少なくとも1桁以上高濃度であった. 阻害様式はATPに対する競合的拮抗であり, MLー9とその類似化合物の阻害作用の強さは薬剤の疎水性と正の相関を示した.これらの事からミオシン軽鎖キナーゼのATP結合部位は疎水性構造をもち, MLー9はこの疎水部分に結合することにより酵素活性を阻害することが示唆された. 2.ウサギの腸間膜動脈を用いて, 血管の収縮反応及びミオシン軽鎖リン酸化反応に対するMLー9の効果を調べた. MLー9は動脈片のKClによる収縮反応を抑制し, 同時にミオシン軽鎖のリン酸化を抑制した. したがって, MLー9はミオシン軽鎖リン酸化阻害により血管の弛緩とおこすことが示唆された. 3.MLー9はコラーゲン刺激による血小板のミオシン軽鎖のリン酸化も阻害し, さらに血小板の凝集反応及び放出反応も抑制した. したがって, ミオシン軽鎖リン酸化はこれらの反応にも重要な機能をもつと考えられる. 4.以上62年度に得られた結果をふまえて, 次年度では蛋白質分子レベルでの実験結果を比較分析し, カルシウム依存性リン酸化反応の生理的意義をさらに検討する.
|