研究概要 |
これまでに我々はカテコールアミン合成の律速酵素であるチロシン水酸化酵素がその反応産物のカテコールアミンによって不活性型に転換され, 不活性型酵素はサイクリックAMP依存性蛋白質リン酸化酵素によって著明に活性化されることを見出し, 新しいチロシン水酸化酵素の活性調節機構を提唱したが, さらに酵素の不活性化を豊々のカテコールアミン構造類縁体を用いて検討した. 酵素の不活性化作用はカテコール環をもち,且つ側鎖にアミン構造をもつ化合物に特異的に認められる性質であることが明らかになった. さらにカテコールアミン構造をもつ化合物は酵素を不活性化すると同時に酵素を変性失活から保護し安定化する性質も合せもつこと,酵素の不活性化作用と安定化作用双方の度合いは比例関係にあることが明らかになり, チロシン水酸化酵素が自らの最終反応産物のカテコールアミンによって安定・不活性型に転換されるという活性の自己調節機構の存在を示した. セロトニン合成の律速酵素であるトリプトファン水酸化酵素の活性調節機構についても検討し, フォスファチジルイノシトールやフォスファチジルセリンによって酵素が活性化されること, およびこれらのリン脂質と酵素をインキュベーションすると酵素は不活性化され, 鉄イオンとSH化合物の添加によって再び活性化されることを見出し, リン脂質により酵素活性の調節の可能性を示した. チロシン水酸化酵素やトリプトファン水酸化酵素をリン酸化し, 活性化するカルモデュリン依存性蛋白質リン酸化酵素IIの性質について検討し, 酵素が自らの蛋白質をリン酸化する自己リン酸化能をもつこと, 自己リン酸化されるとカルモデュリン非依存性リン酸化活性が出現すると同時に全酵素活性は不活性化の方向に働くこと等を明らかにし, 本酵素が自己活性調節機構を備えていることを示した.
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