研究概要 |
我々はミオグロビンと環元剤を用いたモデル反応で, ヘム分解の初期過程がα位メチンブリッジの水酸化とそれに引き続いた開裂反応であることを既に明らかにしている. 今回は, 生理的にこの反応を触媒するヘムオキシゲナーゼとこれに共役するNADPHーチトクロムC還元酵素をウシの脾臓および肝臓から均一の状態にまで精製する一方, 基質としてα,β,γ,δの4種類のハイドロキシプロトヘムをヘムから化学的に合成し, これらを用いて生理的条件下でも同様の基質特異性が現れるか否かを検討して以下の結果を得た. (1) ハイドロキシプロトヘムはNADPHーチトクロムC還元酵素を駆動させた場合のみにオキシヘムを経てビリベルディンになった. (2) ビリベルディンはビリベルディン還元酵素を作用させることによりαービリルビンになった. (3) これらの反応で, αーハイドロキシヘムに対するヘムオキシゲナーゼ系のKm,Vmaxは, 生理的基質であるプロトヘムに比べてKmで2倍であったがVmaxは2倍となり, αーハイドロキシヘムがヘム開裂反応の中間体であることが示唆された. ハイドロキシヘムその他の同族体についても同様の検討を行ったが, これらの生成物質の吸収帯域が基質の吸収帯と一部重なってくるので明快な結論を得ることができず, 現在HPLCを用いて検討を行っている. 一方, ポルフィリンを光増感剤とした一重項酸素発生系によりチトクロム酸化酵素が失活するのは, 反応中心のヘムの分解によることを明らかにした. この際にアスコルビン酸を共存させておくと, 三重項に光励起されたポルフィリンが還元的に分解されて光増感剤としての作用を失うことも明らかになった.
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