研究概要 |
肝潅流法を応用した神経ー肝標本を用いた実験系で, 肝神経(交感神経節後線維)の電気的刺激によってひき起こされる肝ホスホリラーゼの活性化反応が, 潅流液中に加えたαおよびβブロッカーによっても完全には阻止されない知見に基づいて, 肝ホスホリラーゼを活性化するノルエピネフリン以外の交感神経作用因子を交感神経節より分離精製することを目的として研究を行なった. すなわち, 該因子の生理活性を検定する方法として, ラット肝よりコラゲナーゼ処理によって得た浮遊肝細胞をαならびにβブロッカーの存在下で温置し, これに精製過程の該因子を添加すると用量依存的に肝ホスホリラーゼの活性化が認められる検定法を確立した. この検定法を活用して, イヌの腹腔神経節(肝を支配する交感神経ニューロンの起始部)から, 以下の方法でホスホリラーゼを活性化する交感神経性因子の単離を試みた. 百数十頭の成犬から集めた腹腔神経節を醋酸溶液中で熱処理することによって蛋白質分解酵素を失活させた後, ホモジナイズし, アセトン(終濃度75%)を加えて粗抽出液を作成, 濾液を蒸発濃縮する, この濃縮液から脂質を除去した後, セファデックスGー10のカラムにのせてカテコールアミンを分画除去した. 上記の検定法で生理活性を有する分画を集め, 凍結乾燥物とし, さらにHPLCによってイオン交換(SPー5PW,DEAEー5PW)ならびに逆相(ODSー80TM)カラムを用いて精製を進めた. これらのクロマトグラフィーの過程で, 生理活性を持つ少なくとも4つの分画が得られた. その一つの分画について, 逆相カラムを用いたクロマトグラフィーを繰返することによって単一ピークよりなる成分を得た. この成分は分光学的ならびに化学的諸性質からアデノシンと同定された. アデノシンは上記の検定法で用量依存的に肝ホスホリラーゼを活性化し, EC_<50>は3×10^<-5>Mであることが判明した.
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