研究概要 |
血液中に存在する顆粒球は多能性幹細胞に由来し, 種々の中間段階の細胞を経て, ミエロペルオキシダーゼなどの特異的酵素を持つ成熟細胞へと分化していく. この増殖と分化過程には, GーCSFとよばれるタンパク性因子が関与しており, 本研究代表者らは, これまでに, GーCSFをコードするヒトおよびマウス cDNAを単離し, その構造を決定した. そこで本年度は, ヒト GーCSF cDNAをウシパピローマウイルスをベクターとしてマウス細胞に導入し, GーCSFを構成的に大量に分泌生産するマウス細胞株を樹立し, その培養液からヒト GーCSFを均一タンパク質として精製した. このヒト GーCSFをマウスの皮下に24時間ごと8日間注射したところ, マウス血中の好中球は顕著に増加し, 通常の6〜10倍にまで達した. それと同時に, マウス脾臓も肥満化し, その重量は正常脾臓の2〜3倍にまで増大した. 一方, GーCSFは, in vitroにおいて, マウス白血病細胞 NSFー60の増殖を促進するのに対し, 他の白血病細胞 WEHIー3BD^+細胞の分化を誘導した. また, 顆粒球に存在するミエロペルオキシダーゼに注目し, ヒト前骨髄性白血病細胞である HLー60細胞より, ヒトミエロペルオキシダーゼ cDNAを単離しその構造を決定した. その結果, ミエロペルオキシダーゼの2コのサブユニット(heavy chainとlight chain)は1コの mRNAによってコードされており, そのプレプロ前駆体から, 数段階のprocessingを経て, 成熟タンパク質となることが示唆された. このミエロペルオキシダーゼ遺伝子の発現を検討したところ, NFSー6D,WEHIー3BD^+細胞ともにミエロペルオキシダーゼを発現しているが, GーCSFによってその分化が誘導される WEHIー3BD^+細胞においてのみ, その発現抑制が, 癌遺伝子 mycとともに観察された.
|