研究概要 |
顆粒球の増殖と分化はG-GSI(顆粒球コロニー刺激因子)と呼ばれるタンパク性因子により制御されている。本研究代表者らは、G-CSFを大量に構成的に産生するヒトやマウスのがん細胞より本因子のcDNAを単位し、その構造を解析するとともに、遺伝子工学の手法により、ヒトやマウスのG-GSIを大量に産生、精製してきた。本年度は、まず、マウスG-CSFcDNAを用いて、G-CSF遺伝子の染色体における存在部位を検討した。その結果、G-CSF遺伝子はマウス染色体17番上のerb-B2やerbAとともにmapされた。また、精製したリコンビナントマウスG-CSFを〔^<125>I〕で標識し、その受容体を解析したところ、G-CSF受容体は、種々の骨髄性白血病細胞に細胞あたり、1,000〜2,000個の割合で発現されており、その解離定数は100〜200pMであった。このG-CSFとその受容体との結合は特異的であり、G-CSFと同様に顆粒球に作用するGM-CSRやII-3とは拮抗しない。また、〔^<125>I〕G-CSRとその受容体を化学的にcross-linkした解析より、マウスG-CSFの受容体は分子量140,000〜150,000と推定された。一方、顆粒球の増殖と分化の過程では、ミエルペルオキシダーゼ(MPO)などの酵素の発現が特異的に誘導されることから、MPOのcDNA染色体遺伝子を単離し、その構造を解析した。その過程で、ヒト染色体上には、ミエルペルオキシダーゼに似た遺伝子が存在することが示唆され、その染色体遺伝子を単離し、その構造を解析した。その結果、このミエルペルオキシダーゼ様遺伝子は、ミエルペルオキシダーゼと同様に12個のエクソンから成りそのアミノ酸配列はミエルペルオキシダーゼと83%の相合性を保持していた。ついで、種々の白血病細胞のNorther hylridzationによる検討から、本遺伝子は、好酸球の性質をもつ白血病細胞株で発現しており、本酵素は、好酸球に特異的なペルオキシダーゼと推定された。
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