研究概要 |
顆粒球は、多能性幹細胞に由来し、種々の中間段階の細胞を経て、ミエロペルオキシダーゼなどの特異的酵素をもつ成熟細胞へと分化する。この増殖と分化過程にはG-CSR(顆粒球コロニー刺激因子)と呼ばれるタンパク性因子が関与しており、本研究代表者らはこれまでにG-CSF cDNAを単離し、その構造を決定した。本研究では、まず、このヒトやマウスG-CSF cDNAを用いて遺伝子工学の手法により、マウス細胞での大量生産を行ない、そのG-CSFを精製した。この精製G-CSFをマススの皮下に注射すると、マウス血中の好中球数は通常の6〜10倍に達し、同時に脾臓の増大が観察された。一方、G-CSFを[^<125>]で標識した後、その受容体を検索した。G-CSFの受容体は、骨髄細胞ばかりでなく、骨髄性白血病細胞に、細胞あたり1,000〜2,000コの存在が認められ、その解離定数は100〜200pMであった。また、[^<125>]G-CSFとのcross-linkingの結果から、その受容体の分子量は140,000〜150,000と推定された。一方、顆粒球のマーカー酵素として、ミエロペルオキシダーゼに注目し、ヒト白血病細胞HI-60より、そのcDNAを単離し、その構造を決定した。このcDNAを用いて、種々の骨髄性白血病細胞における発現を検討したところ、マウスの白血病細胞NFS-60、WEBI-3BD^+とともに、その発現が認められた。ところが、G-CSFによってその顆粒球への分化が誘導されるWEHI-3BD^+ではその発現の抑制が観察されたが、増殖のみで分化が誘導されないNFS-60ではその発現にG-CSFの効果は見いだされなかった。一方、ヒトミエロペルイシダーゼの染色体遺伝子は12個のエクソンから成り立っていたが、その解析の過程で、ミエロペルオキシダーゼと83%相同性をもっており好酸球様の骨髄性白血病細胞において発現されていることから好酸球ペルオキシダーゼと推定された。
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