研究概要 |
哺乳類細胞からコレステロール代謝が異常を示す遺伝変異株を単離し, これをコレステロール代謝疾病のモデル細胞として提唱するために, その変異部位について解析を進めることにした. その結果, 我々はハムスター細胞から単離したモネンシン耐性株とコンパクチン耐性株について, 1.両変異株ともに低比重リポ蛋白(LDL)に対する結合やエンドサイトーシス活性が著明に減少している. 2.LPL存在下に, コレステロール合成が親株に較べて著明に上昇していた. 3.LDLレセプターの合成を, ^<35>Sーメチオニンで標識し, その抗体で沈降させて追跡したところ, 前駆体の分子量は変異株と親株間で差はなかったが, 成熟体の分子量は両変異株で減少していた. 4.ツニカマイシンやOーグリカナーゼ処理などを行い, LDLレセプターに結合するOー糖鎖のいずれが糖鎖不全をおこしているかを調べたところ, 両変異株ともに, そのレセプターのOー糖鎖の不全をひきおこしていることを観察した. 5.モネンシン耐性株およびコンパクチン耐性株のレセプター不全は, 各々, 劣性形質である. 両変異株間で細胞融合を行い, LDLレセプターの構造不全が回復するか否かを調べたが, 回復しなかった. 以上の結果より, 我々が単離した両変異株は, 全く独立に単離したにもかかわらず, LDLレセプターのOー糖鎖不全をひきおこしており, 同じ相補性グループに属していることが判明した. 両変異は, ゴルジ装置の糖鎖修飾過程に影響を与えていることが示唆され, 今後その詳細な解析を進めていく.
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