研究概要 |
目的と方法:肺高血圧, とくに先天性心疾患に随伴するものでは, 肺動脈病変の進行に伴い高血圧が非可逆化するが, 病変分布, 血管床の狭小度, 側副循環路の形成様式などに未解決の問題が多い. これは従来の研究が, 動脈病変一個の質的な解析に終始したためと考えられる. そこで肺の血管樹を総体として扱うことにより病態を解明すべく, 種々の病期にある肺高血圧の生検・剖検材料(現在11例)から肺の連続切片を作成し, 肺血管の断面像を画像解析装置を用いて連続二次元像として抽出, 三次元コンピュータ画像処理装置を用いて肺動脈樹の広範囲の立体可視化を実施した. この画像上に各種の動脈病変のマッピングを行うことにより, 肺循環の動態を解析している. 62年度における研究の概況:現在すべに次の知見を得ている. 1.肺動脈の閉塞性病変はすべて外径150μm前後の細動脈に生ずる. 2.病変は従来, HeathーEdwardsの基準で質的に分類され, それに基づき病期決定が行われてきたが三次元マッピングの結果からは, 病期進行はむしろ閉塞性病変の数の増加, それによる血管床の狭小化に相関することが明らかになった. 3.閉塞性病変の代表的な2型であるPlexiform lesionと内膜線維化による閉塞は, それぞれ血管樹の一定の部位に生ずる傾向があり, 病変発生に血行動態面の因子が関与すると考えられる. 4.三次元的にPlexiform lesionの内部には蔓状の小血管網が見出されるが, 血流は10%以下, 内膜線維化の部位ではしばしばゼロと推定される. 5.通常, この様な進行した肺高血圧症例においても 2〜3l/min程度の肺血流は維持されているが, 上の結果からは肺動脈床には, 既にその余地はなく, 側副循環の発達による代償が不可欠と考えられる. 63年度の計画:以上から, 高血圧の進行に伴い肺循環は逐次側副路に肩代りされることが予想される. そこで次年度は気管支動脈系を含めて肺循環再編成の様相を解明して行く予定である.
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