研究課題/領域番号 |
62480137
|
研究種目 |
一般研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
人体病理学
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
畠山 茂 東京医科歯科大学, 医学部, 教授 (30045926)
|
研究分担者 |
寺田 充彦 東京医科歯科大学, 医学部, 助手 (90197799)
江石 義信 東京医科歯科大学, 医学部, 助手 (70151959)
|
研究期間 (年度) |
1987 – 1988
|
キーワード | 精子形成障害 / 自己免疫 / 抗セルトリ細胞抗体 / 精細管基成膜 |
研究概要 |
精子形成障害を引き起こす自己免疫的要因として、造精機能を支えるセルトリ細胞を標的とした自己抗体がヒト血清中に証明された。この抗セルトリ細胞自己抗体は、睾丸精細管内セルトリ細胞の胞体に強く結合するほか、耳下腺導管上皮、膵臓介在部導管上皮、下垂体好酸性細胞、副腎髄質細胞にも結合能を有するIgM自己抗体で、マウスで実験的に精子形成障害を引き起こすことが既に証明されたセルトリ細胞に対するモノクロナール自己抗体(TM-1)と、免疫反応性および多臓器反応性においてまったく一致しており、ともにセルトリ細胞にある分子量67000および23000の自己抗原物質を認識する自己抗体と考えられた。このようなヒト血清中抗セルトリ細胞自己抗体は新生児期にはみられず、健常成人365例においては男女をとわず11.6%に認められ、また男性不妊症患者43例における出現率2.3%とのあいだでは有為な差は認められなかった。このことから特発性精子形成障害の自己免疫的要因としてセルトリ細胞はその重要な標的となりうるが、疾病成立の条件としては、この自己抗体が、バリヤーとしての精細管基底膜の透過性異常に起因して、標的細胞であるセルトリ細胞に到達しうるべき病態のほうがより重要であることが判明した。そこで精細管基底膜の機能異常とその自己免疫的な誘導因子となりうる抗基底膜自己抗体に関して検索したところ、精細管基底膜に対する自己抗体がヒト血清中にも存在すること、この自己抗体の免疫学的特性が、TM-1との同時投与にて実験的に精子形成障害をひき起こすことが既に証明されている精細管基底膜に対するモノクロナール自己抗体(TM-2)と同様であること、またTM-2の静脈内投与が実際に精細管基底膜のバリヤー機能を障害していることをペルオキシダーゼを漏出物質として用いた実験系にて形態学的に直接証明した。これらのことからセルトリ細胞および精細管基底膜にたいする自己抗体が、ヒトにおいて正常の精子形成能を脅かす因子となりうるものと結論した。
|