研究課題/領域番号 |
62480139
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研究機関 | 国立がんセンター |
研究代表者 |
広橋 説雄 国立がんセンター研究所, 病理部, 室長 (70129625)
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研究分担者 |
吉田 輝彦 国立がんセンター, 研究所・分子腫瘍学部, 室長 (10191602)
向井 清 国立がんセンター, 研究所・病理部, 室長 (20190837)
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キーワード | 乳癌の予後因子 / がんの悪性度 / Coxの重回帰分析 / 胃癌 / sam / c-erbB-2 / c-myc / 肝癌 / B型肝炎ウイスル |
研究概要 |
昨年度の研究の延長として、乳癌の手術症例176例におけるがん遺伝子の増殖の予後因子としての重要性を検討した。Coxの重回帰分析を用いると、がん遺伝子の増幅のうちc-erbB-2の増幅のみが腫瘍径やリンパ節転移の程度と独立した予後因子として重要であったが、c-erbB-2の増幅は組織学的異型度(特に核異型と核分裂像の数)と強く相関し、重回帰分析にさらに組織学的異型度を加えるとc-erbB-2の増幅の重要性は組織学的異型度の中に吸収されてしまった。組織学的異型度とc-erbB-2の増幅は共にがんの悪性度と強く関連していたが、現時点では前者の方が後者よりも有効かつ簡便な予後因子であると考えられた。また、過去に手術による原発巣の切除と剖検の両者が行われた胃癌症例30例、ならびに乳癌症例10例のホルマリン固定パラフィン包埋組織より、DNAを抽出し、c-myc、c-erbB-2、sam遺伝子の増幅を検索し、がんの進展に伴う遺伝子増幅の経時的変化を検索した。原発巣ではc-mycの増幅は胃癌で1例、乳癌で2例認められたが、転移巣では各々2例、3例検出された。またsamの増幅は胃癌の低分化腺癌の4例に検出されたが、そのうち3例は3例にみられたが、転移巣では4例に増え、各々転移巣におけるコピー数が原発巣より増加していた。このようにがん遺伝子の増幅が転移の過程で出現あるいは増強していくことが示された。また肝癌の切除材料のホルマリン固定パラフィン包埋ブロックよりDNAを抽出し、B型肝炎ウイスルDNA(HBV)を検出して、HBVの関与している肝癌が近年減少してきていることが示された。今後遺伝子の点突然変異の検索やmRNAの検索ができるように方法の開発や組織の固定法の改良が必要であろう。
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