研究概要 |
これまで私共は、幼若ラット、及び成熟ラットを用いた実験において、メラトニンには糖質ステロイドホルモンに対して拮抗する作用のあることを見出した。また、これと全く同様の現象が、8週齢の雌ハムスタ-を用いた実験でも認められ、さらに病理学的検索の結果、デキサメタゾンを投与することにより生ずる膵臓ランゲルハンス島の著しい過形成やβ細胞の増生が、メラトニンを投与することにより明らかに軽減されることを見出した。また、ラットを用い、高コレステロ-ル食を投与することにより起こる脂質代謝異常のうち、高コレステロ-ル食投与初期における、血中総コレステロ-ル値の上昇が抑制されることを見出した。本年はこれらの脂質代謝異常に対するメラトニンの拮抗作用を詳細に検索した。即ち、SD系雄ラットを普通食或は高コレステロ-ル食で飼育した。メラトニンは1日当たり4mgを、また対照群には生理食塩水を何れも腹腔内に注射した。各実験期間中、血中脂質,血中リパ-ゼ及び肝組織像について検索した。さらに血中リポタンパクについては、アガロ-スゲル電気泳動法、超遠心法、HPLC法を用い分析した。普通食飼育ラットにおいてメラトニンの投与は体重、血中脂質に変化を与えず、高コレステロ-ル食飼育ラットにおいて、血中総コレステロ-ル上昇を抑制した。しかしトリグリセリド及びグルコ-スに変化は見られなかった。血中リポタンパクについて、高コレステロ-ル食飼育ラットでは超低密度リポタンパク(VLDL)及び低密度リポタンパク(LDL)の上昇と、高密度リポタンパク(HDL)の低下を認めたが、メラトニン投与により、VLDLとLDLの上昇及びHDLの低下はいずれも抑制された。さらにリポタンパクの組成を調べると、メラトニン投与により、VLDL及びLDL中の総コレステロ-ルのみが減少し、トリグリセリド及びタンパク量に変化は認められなかった。
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