研究概要 |
我々は炎症局所に滲出した多核白血球が炎症の場でいくつかの生物活性因子を合成していることを示唆する現象を見出した. そこで,この炎症の場で合成されている活性因子を同定し,この因子のモルモン〓作用を明らかにし,多核白血球が一種のホルモン産生器官として仂いているという新しい概念を確立することを目的とした. ウサギ腹腔の5時間目炎症局所から多核白血球を多量に採取し,これからmRNA分画を採取し,OkayamaーBerg法によりcDNAライブラリーを作成した. 一方,炎症局所のペプチド性免疫応答因子の部分構造を明らかにし,この構造のGlu_<10>ーLys_<15>に対応する^<32>PーオリゴDNAを作成し,上述の炎症滲出多核白血球のRNA分画をNorthern法によって調べた結果,約1.6kbpのmRNAが検出され,cDNAライブラリーを同じプローブによって検索した結果得られた陽性クローンについて,そのcDNA構造を分析し,この因子が全体として268ヶのアミノ酸残基から成る前駆物貭として合成され,Asp_<116>とAla_<117>の間で切断され,152ヶのアミノ酸残基から成る活性因子となることが判明し,その構造はヒトInterleukin 1βと類似する物貭であることが明らかになった. また,このcDNAを発現ベクターに組込み,組替え遺伝子産物を作成し,ヤギを免疫してこの因子に対する抗体を作成した. 上述の結果得られたウサギIL1βc DNA,antisense RNA,組替え遺伝子産物,抗体を用いて,ウサギ腹腔の炎症滲出細胞について調べた結果,そのmRNAは炎症2時間をピークに発現し,活性因子自体は炎症4時間をピークに産生されており,炎症の極く早期に作られるホルモン株因子であり,その産生細胞は多核白血球とマクロファージの両者であって,その比率は約100:1であり,大部分のinterleukin 1β産生産胞は多核白血球であることが判明した.
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