研究概要 |
細胞老化が遺伝子障害の蓄積あるいは老化遺伝子の発現によると仮定すると, DNA障害をおこす物貭は標的器官/組織における加齢性病変の発現もしくは進展を促進すると予想される. 下記実験はこの可能性の検討を目的として実施された. 1.4ーHydroxyaminoguinoline 1ーoxide投与によるラット副腎の血管拡張性病変の発生. 生後1.5年以上のラット副腎皮質には実質細胞の萎縮を伴う巣状の血管拡張性病変が頻繁にみとめられ,Peliosis adrenalisと呼ばれている. 今回,極めて類似した病変が4HAQO7mg/kgの1回静注後20週目の雌SDラットに高率に発生する事実を認めた他,15mg/kg投与後3時間目に実施した32pーポストラベル法により4HAQOがラット副腎皮貭にDN付加体を生成する事を確認をした. 現在,4HAQO投与後の継時的屠殺により, 同病変の組織発生について検討中である. 2.Adriamycin投与によるラット腎障害の組織発生. ラットの加齢性腎症に類似した病変がAdriamycin1回投与により数週間で発現する. この場合, Adriamycinの標的部位は糸球体上皮細胞と確認されている(前回). 引き続き, 糸球体病変の組織発生を検討するために, 8mg/kgを1回静注した雄SDラットについて組織学的, 組織化学的及び電顕的検索をおこなった. 投与4日目に糸球体上皮細胞内にPAS陽性顆粒が現われ,時間と共にその数が増した. 8日目以降より,糸球体上皮細胞は膨化, 剥離し, 拡張した尿細管内にPAS陽性円柱がみられた. 電顕的には, 4日目より足突部が融合し, 細胞貭内に小胞体の拡張と酸フォスファターゼ陽性顆粒の増加がみられた. 糸球体のアルシアン青及びコロイド鉄染色性は病変の進展に伴って低下し, 糸球体基底部における陰性荷電物貭の減少を示唆した. 尿細管には拡張, 上皮細胞の扁平化, γーGTP,ALP活性の低下がみられた.
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