研究概要 |
マラリアワクチンの開発研究は現在国連が最も緊急を要する課題として各国の研究連絡体制と研究調整をはかりながら推進している, 国際的な研究課題である. 流行地におけるマラリア感染の観察によれば, 同一のヒトが, 短期間にマラリアに何度もかかることが認められる. したがってマラリアのワクチンを開発する際に野性株をそのまま原材料として研究を推進させることは得策ではないと考える. われわれは, ネズミ・マラリアの系において強毒マラリア原虫から, 安定した弱毒マラリア原虫の変異株を得ることに成功し, 弱毒マラリア原虫が生ワクチンとして長期にわたり顕著な効果を示すことを見出した. さらに強毒原虫と弱毒原虫の相違を分子レベルで追及し, 一定の成果をあげた. 以上の成果をもとに実際にヒトにおいて問題となる熱帯熱マラリア原虫(PF)の毒性変異研究し, 弱毒原虫を原材料として生ワクチンを含めたワクチンの研究をすすめることが本研究計画の趣旨である. ネズミ・マラリアの系によって弱毒原虫は, モノクローナル抗体によってとらえられる240ーKdの分子量をもつ特有のエピトープを有すること, 強毒原虫はポリクローナル抗体によってとらえられる30Kdの強毒原虫特有の抗原分子をもつことが判明したので, この知見をPFの解析に利用した. そのため, 輸入熱帯熱マラリア患者発生の通報がよせられるたびに, 患者の入院しているさまざまの病院をおとずれ, ガーナ, インド(2株), マダガスカル(2株), ケニア, タンザニア(?)由来のマラリア原虫株計7株を分離株として培養系に適応させ保存した. さらにまたスーダンの海外学術研究で得たマラリア高度流行地住民の血清を使い, 可溶化PF原虫抗原の電気泳動分画とウエスタンブロット法で反応させた. その結果, ネズミの系の強毒マラリア原虫にのみ認められた30ーKd分子がPFにも確認され, PFの強毒ー弱毒に関する研究上, 重要な足掛りを得た.
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